おじ様方5人で会食に行った。
2名以上の会食なんていつぶりだろうか。
去年までは、このメンバーで会食会を開催していた。2カ月に一度開催していた会合だったが、コロナ禍で3月以来の不定期開催になった。
異業種交流会を兼ねたグルメ会だ。幹事は持ち回りで、一晩でだいたい3~4件の飲食店を回ることになる。
メンバーで30代は僕だけ。おじさま方の趣向に沿えるよう努力が必要とされる。個人的に、こういった努力は嫌いじゃない。
ワンランク上の食事や遊びを体感させてもらえるので、経験値を高める場として重宝している。
そして、先日この会合でエスニック料理屋に訪問した。
そちらで頂いた『ゆり根と貝柱の春巻き』がとてもおいしかったのだ。
とっても、とっても美味しかったので、文章を書き始めた次第だ。
春巻きの写真?残念ながら、写真はない。
これがゆり根だ。よく茶わん蒸しの中で見かけるアレがゆり根だ。
画像引用:JAようてい
春巻きの中には、ゆり根を丁寧に裏ごししたものが入っていた。
ゆり根を裏ごしするとマッシュポテトに近い食感になることは想像にたやすいだろうか?
そこに貝柱のコリコリとした食感と、海鮮の風味が交わり新食感を生み出すのだ。
僕は、あまりの美味さに店主に作り方の手順を問うた。
店主曰く、調理のポイントはゆり根ペーストのなめらか具合とのこと。
生クリームで調整していくのだが、さじ加減次第では火入れ後の食感が台無しになる。
「目安は、あなたが思う滑らかな状態の2歩手前ぐらいがちょうど良い」とのこと。
なんじゃそら。
しかし、まぁ。人生を振り返ってみて、ゆり根との初対面はいつだったろうか?と考えた。間違いなく茶わん蒸しだ。
それ以来、茶わん蒸しの中でしか出会いが無かっただけに、春巻きの中で出会ったことだけでも感動ものだ。
そんな事を考えながらモグモグしていた。
外食で感動するってこういうことかもしれないな。
「感動」って何も大それたものではなく、自分の身の丈にあった外食で、ささやかな感動体験があれば良い。
僕達は、そういった想いで、店を選び、期待を込めて訪問するのだ。
僕はアラフォーだ。かつて、20代で訪れた飲食店には興味がない。
純粋に、若者向けの料理(味付け)がしんどいという点が根底にある。
メニューを一読しても食べたいものが見当たらない。「どんな触感がするんだろう?」、「ちょっと想像がつかないけどトライしてみたい」とったワクワク感がしないモノが多い。
恐らく、チェーン店のメニューBOOKではそんなことは求められていないのだろう。
分かりにくいメニュー名では注文はされない。冒険はしたくないのだ。
ちなみに、先ほどの、「ゆり根と貝柱の春巻き」、メニューには「本日の春巻き 2本900円」との記載があるだけだ。具材に関する言及はない。
こちらの心理としては、「春巻き2本で900円 おいしいだけでは済まさない 」という気持ちになる。
さらに、本日の春巻きということは、明日は出会えないかもしれないのだ。
「さぁ、どう出で来るよ?」という状況を楽しむしかないじゃない。
できうる限り、お金はこういった使い方をしたいと思っている。
他にも、客層が若い店を避ける理由は、静かにおいしいものが食べたいのだ。
さらに欲を言えば、席同士の間隔が広く、肘置き着きのある椅子に座りたい。座面と背もたれが直角で遊びのないベンチシートには座りたくない。
このエスニック料理屋は、こういったおじ様方の店選びの基準をクリアしていた。もう、ど真ん中ストライクだ。
我々は、店主に「料理が素晴らしい、また再訪したい」と賛辞を送った。
「あと3カ月ですが、またいらしてください」と店主。
えぇぇぇぇ・・・そんなことあるぅぅ?
この店の常連になりかけていた幹事は ショックを受けていた。
店主に話を聞くと、コロナ禍で厳しいそうだ。
もう、数カ月も赤字が続いており、たくわえを切り崩しているそうだ。
それも、このままのペースで行くと来年の5月で底をつくそうだ。
GoToイートの恩恵にあずかるどころか、むしろGoToイートが始まってから減少に拍車がかかっているとのこと。
GoToイート事業は、大手やチェーン店が恩恵を被りやすい仕組みだ。
裏を返せば、小規模店の集客機会を奪っているともいえる。
食〇ログでは無料掲載状態のこの店には、ネット予約機能が無い。
GOTOイート事業においてはTポイントが貯まらない店に分類される。
有料掲載店にアップグレードすれば良いじゃないか?という声も聞こえるが、ネット予約客1名毎に発生する手数料が利益を圧迫する等、そう単純な話でもないようだ。
はからずも、GoToイート事業や食〇ログの仕組み等、飲食業界の闇を聞かされた夜だった。
ごちそうさまでした。