昨晩、思いのほか早く仕事を終わらせることが出来た。
日付をまたぐことを覚悟していたが、22時半に終わらせることが出来た。
いつもの盛り場で一人、お酒を飲みに行った時のお話を投稿します。
尚、アイキャッチの写真は、2件目です。このお店とは関係はありません。
時間も時間だったので、目についた、個人居酒屋らしきとことに入店をしたんです。
店名は「焼き鳥〇〇」
最近よく見かける透明なビニールのカーテン?のようなもので屋台感を演出している。
画像引用:
https://www.vinyl-tent.com/user_data/blog?id=2378
このビニールカーテンをくぐる。店主と目が合う。
開口一番
「ごめんねーもう串ないよ?それでもよかったら」
おそらく、焼き鳥をありきで、訪れる客が多いのだろう。で、焼き鳥等の串ものが無いと分かると帰るのだ。当たり前だ、ここは焼き鳥屋だから。
店主の目を見て、僕はうなずき、店内に一歩踏み入れる。
「あ、カーテン閉めてね。今日は寒いから」
「ごめんねーもう炭落としちゃったから、おでんだけねー」
追い打ち攻撃がきた。「かまいませんよ」と僕は返答した。
「かまいませんよ」とは言ったものの、たこわさとか、チャンジャとか、つけものとかなんかあるだろと思いながら、カウンターの端に座る。
「ごめんね、ラストオーダーまで20分だけど・・、あるのはおでんとドテ煮くらいだね。」
入店から、まだ「いらっしゃいませ」を言われていない。
言われたのは、「メインメニューが品切れであること」、「ラストオーダーまであと20分しかないぞ」という店側からの通告だ。
文字に起こしてみると、ろくでもない焼き鳥屋のように思えて、悪態の一つでもついて、席を立つという意見の方もいらっしゃるだろう。
しかし僕は立たない。理由は幾つかある。
- まず、閉店間際に飛び込んだのは僕だ。
- 個人店はフリーの客が入りにくいので仕込みをギリギリで調整しているもんだ。
- それよりも、この「タメ口野郎」の実力を知りたかった。
実は、一年前くらいにも一度入店を試みたことがあった、その時にこの店主から「もうラストオーダーとったから」とタメ口で断られたことがある。この時のタメ口にイラっとしたことは、今でも覚えていた。
さて、入店から僕の期待を裏切らない「タメ口店主」。ただ、この店主さほど嫌な気はしないことに気づいた。たぶん会話の頭に「ごめんね」をつけてくるからだろう。タメ口店主なりに、僕に対して「ごめんね」と言う気持ちは抱いていてるのだろうか、癖なのか、処世術なのか。
タメ口なのは店主の「キャラクター」だと思ってしまえば嫌な気持ちはしないかもしれない。社会に出ると、何かしらのサービスを受けたり、逆に何かを提供したりするわけだが、敬語で接することが当たり前になっている。
だから「タメ口」に出会うと過敏に反応をするのだろう。ここは、こちらが大人になれば良い。それに、僕は連日連夜の過剰労働で疲れ切っている。別に言い争う気もない。
タメ口店主が僕の顔を見てる。
「お兄さんはじめて?」
「ごめんね、初めて来てもらったのに何もなくて」
「うちのおでん食べてみてよ、とってもうまいから」
タメ口店主がグイグイ来る。一見の客に「とってもおいしいから食べてみてよ」なんて、よほどの自信の現れか?
おでんのはいった大鍋を見てみる。 「大根、ちくわ、こんにゃく、それとドテ煮込みをください」と伝える。
あと、おでんのタネは「がんもどき」しか浮かんでいない。
「大根、ちくわ、こんにゃく、ドテ煮込みね、飲み物は?」
ここで、メニューがテーブルに無いことに気づく。仕方なく店内を見渡して、芋焼酎の「久耀(くよう)」の瓶が目に入り注文した。「久耀」は僕の好きなお酒だ。これを置いている店には出会ったことはない。決して高い酒ではない。酒屋ビックやリカマンに行けば置いてある酒だ。
「はい、久耀のロックねー」、「これおいしいよね」と酒が供された。
お?
おお・・今のタメ口、悪い気はしない。
先ほど注文した、おでんが到着した。やたらとうまい。外でおでんを注文する機会はない。
実家の母親か妻がつくるものか、たまにコンビニのおでんを冬場に食べるくらいの経験値しかない。おでんの美味さを語るほどの舌は持ち合わせてはいない。
期待値の上がった僕は、ちくわと大根の追加注文をしようとタメ口店主に声をかけた。
「その注文もうれしいけど、これ食べてよ。がんもどき自家製だから」
言われるままに、大根とがんもどきを頼んだ。がんもどき、ちょっと驚くぐらい美味しかった。
次の酒は、何にしようか考えた。僕の席には、メニューが無いのだ。仕方なく、タメ口店主に「メニューが無いんですが、冷酒何かありますか?」と聞いてみた。
「今ね、あまりいいのが無いけど、お兄さん甘いのが好き?」と問われた。
「焼酎でも日本酒でも、甘くて華やかなのが好きだ」と伝えると一本の酒が出てきた。「綿屋(わたや)」という純米吟醸だった。うまい酒だ。
特別高い酒でもないので注文した。タメ口店主からは、メニューが無いのか?と言う僕の問いに関してはノーコメントだった。
「綿屋」という酒はとても美味しい。「うまい」とタメ口店主に伝えるでもなく言葉に出した。
綿屋がなくなった。次に何を飲もうかとキョロキョロしていた。するとタメ口店主は、「これ、試してみる?」とよくわからない日本酒の瓶を持ち上げた。
僕は、「いただこう」と返答した。
驚くことに、何と、冷酒グラスに、一口分だけ注がれて出てきた。
なんだ、この提供の仕方は?そんな高級な酒なのか?日本酒で一口で1,000円とか取るつもりなのか?訝しく思いながら、一口でその冷酒を飲んだ。
非常にうまい。思わず、タメ口店主を見た。目があい、お互い破顔(笑)
「私が勝手におすすめして、お兄さん好みじゃなかったら悪いでしょ?だから一口」とタメ口店主が言う。
焼き鳥屋で試飲?なんだそれは。
決して暇じゃない。安くて忙しいお店だ。厨房はワンオペだ。
なんだこの店主は。
バカ素晴らしいじゃないか。
なんだっけ?
そうでした、飲食店における店員の「タメ口」論。
もちろん、どんな商売であれ、お客様に投げかける言葉である以上、おススメはしません。店員側がどうであれ、お客様の精神状況次第ではではクレームに発展するケースが想定されます。
ただ、お客さんにあなたの「おもてなし」の気持ちが伝わるなら、あなたの伝える姿勢で受け入れてもらえる場合もあるので、形にこだわる必要は無いですよね。
「タメ口か敬語か」だけで、飲食店の良し悪しを判断すると、もったいないケースもあるなと思いました。
「ご馳走様でした。」