数日前、たまに一緒に仕事をする社長様から「食べてみたいラーメンがあるから、一緒に食べにいきませんか?」と連絡があった。
嫌な誘いだ。だが、断れる相手ではない。
現在、僕はダイエット中である。3週間、炭水化物を抜いている。昼はいつもサラダとサラダチキンだ。毎晩毎朝筋トレもしている。今、食に対してストイックモードなのである。
正直行きたくない。
だって行ったら食べなきゃいけないから。仕事だから。
そう、お仕事なのだ。
つまり、先の彼が、「ラーメン食べにいきませんか?」という真意は、「ラーメン店が売りに出ているので、買う価値があるか一緒に精査してほしい」ということだ。
物件内覧ツアー
ということで、愛知県でラーメン店視察ツアーをしてきた。
ツアーメンバーは社外の専門家ばかりで構成される。メンバー構成は、買主企業の社長、不動産の専門家、設計士、施工会社、会計士、飲食コンサル業の社長。総勢6名。
そして、瀕死の獲物にたかる、ハイエナ集団のごとく店舗に客として乗り込んでいくのである。
従業員未告知の内覧は疲れる
ケースバイケースだが、売りに出ている案件のほとんどが、従業員や店員には未告知の案件なので、細かく従業員に質問をしたり、厨房の中まで立ち入ることはできない。でも、出来るだけ店を把握する必要がある。
なので、この手の案件の内覧の時は、みんな思い思いの自然な服を着て、店に集合する。不自然にならないように席はバラける。このチームはいつも3組に分かれる。
組み分けは、「不動産の専門家と会計士」、「買主企業と飲食のコンサル」、「設計士と施工店の」3卓。親和性の高い職域同士で分かれる。
各々が出来うる限りの精査をして、30分後に近くのカフェで意見交換会をして、ジャッジをする。そして次の店に行く。
飲食コンサル業の人は、スタッフがモチベーション高く仕事が出来ていそうか?マニュアルの浸透率、制服の乱れ、POPのしずる感、接客、メニューのクオリティ等をチェックしながら、ラーメンをすする。
設計士と施工店は、どこが生かせて、どこを解体するのか、投資額のイメージを検討しながらラーメンをすする。
不動産と会計士は、買取金額の妥当性、建屋設備の問題点、そもそもの物件としての価値(立地の良し悪し、乗入れの間口の適正度、看板の視認性、近隣競合とのパワーバランス)を考えながらラーメンをすする。
たぶん、うまそうにラーメンを食べていないのだろう。
店舗のスタッフの方もいぶかしげな表情を投げ掛けてくるのだ。
「なんか、今日はへんなおじさんたちがいるぞ」と。
ラーメンは本当に難しい商売だと思う。
一言で言うと、あらゆる角度から、「既に開拓がされまくっている」食べ物だと思う。
- スープのベースを何にするか?
- 普通のラーメンか、つけ麺か、汁無しなのか?
- こってりかあっさりか?
- 王道(トラディショナル)か邪道(変わり種)か?。
- 低価格路線か、高価格路線なのか?
という、商品戦略のみならず。
- 男性向け?女性も取り込む?
- シングル相手?ファミリー向けなのか?
- 中心部でやるのか、ロードサイドでやるのか?
- 中心部といっても、市場を回遊する属性と提供したいラーメンはあってるのか?
ターゲティングや立地戦略も多岐にわたる。
ラーメン屋の戦い方のバリエーションって多い。
組み合わせが無限にあるように思う。もう成熟しきった商売。成熟産業と言っていい。
飲食店って、ラーメン屋に限らず何をメイン商品に選んでもそうかもしれないかもしれないが・・・。
ただ、ラーメンに限って言うと「ラーメンって、大概のものはそこそこうまい」
ということ。王道であっても、変わり種であっても、「これは、まずい!」と思うラーメンってなかなかない。だから、そこそこのラーメンでも、そこそこの固定客がついている。
その一方で、こってりが好きなひとも、たまには激辛台湾ラーメンが食べてみたかったり、煮干しが食べてみたかったり、浮気しがちな食い物のように思うので、固定客であっても回遊しがち。
そんな事を考えながら、ラーメンをすする。
僕は、飲食のコンサルでも、ラーメン評論家でも、ラーメン大好きな一般人でもない。一般人の感覚で言うと、今回のお店は、普通に美味しかった。近所にあれば、もう一回行ってもいいかなと思う。テーブル席や座敷もあり、子供もつれていけるし。キレイだし。2回目行くと飽きるのかもしれない。それは僕にはわからない。
でも、近隣の方々には支持されていないのだろう。13時過ぎに客がほとんどいなかった。
まあ、僕は呼ばれた役割を果たすだけであって・・。
「3店舗とも物件に問題がある。」、「手前の交差点からの視認性、乗り入れのスピードや、駐車場の配置に問題がある。」、「建物を壊して建て直して成功する物件」と進言しておくに留めました。あとは、それぞれの専門家が精査結果を伝えれば良いのだ。
それにしても、倒産しそうな会社の社員である僕が、倒産物件を嗅ぎまわっているってのも笑える・・。