先日、上の記事をブログに書いた。
この記事に出てくる友人のトピックが印象深かったので、書き記しておこうと思う。
友人(京都の地方銀行に努める37歳の管理職)と、彼の部下達のやりとりだ。
またもや、世代間別の特徴にふれる内容です。「ゆとり世代」、「さとり世代」という単語が出てきます。不快ならすいません。お戻りください。
世代の価値観
画像引用:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO98989500Z20C16A3I10000/
バブル世代(今50歳くらい)、ロスジェネ世代(今40歳くらい)、ゆとり世代(今30歳前半くらい)、さとり世代(今20歳半ばくらい)。ざっくり年齢別に分けるとこうなるらしい。
当たり前のことではあるが、世代によって人の価値観は異る。時勢の移ろいや、豊かさの質や量が影響しているわけだが…。変遷に伴って世代間の幸福の定義が変わらないとしたら、それこそ不健全だ。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉がある。自らが置かれている立場によって欲求の対象が異っていくというものだ。順序としてはこうだ。低順位から、衣食住等の「物」、次に「金」、次に「自己」、次に「利他」となるそうだ。
僕はロスジェネ世代の終わりの世代だ。僕も含めて僕を取り巻く周囲の人間は、「自己」よりも、どちらかというと「お金」に自己のアイデンティティを投影するような生き方を選んだと認識している。
目標達成に対して金銭で報いるとハッパを掛けられるとモチベーションが上がる。金銭で報われないなら、その会社への忠誠心や帰属意識は低下する。つまり、「なんだかんだでお金が一番大事かも。仕事で自己実現したい」って思っちゃうのだ。
これまでの上司達は、「組織の中で権利主張したいなら、稼いでこい。」というフレーズをよく使っていたが、案外すんなり腑に落ちた。
実際、上司から叱咤激励(罵倒とも言う)されて、自らの殻を破り成果をもたらしたことも多い。
若い人達を部下に持つロスジェネ世代
仮に、『 若い人達=「30代半ばより下の「ゆとり(さとり)世代」』とする。
若い人達は、「自己」を大切にする事を、生き方の軸に置いている。「自分自身の尊厳を大切にする」という考え方が、彼らの発言や行動から見えてくる。
- 「役職付けたとたん管理者扱いをされて残業代払わないでしょ?」
- 「課長になるまでに5年ですか?いやいや、もう転職しちゃってますよ(笑)」
- 「残業代とか役職手当いらないっす。定時に帰って色々やりたいんすよ。」
- 「課長は何で奥さんから離婚突きつけられないんですか?」
これらは、過去に僕が部下から言われた記憶のあるセリフだ。
「残業代や昇進による役職手当よりも、プライベートな時間を確保したい」ということだ。昇進して、主任、係長、課長手当や地位を獲得しようとする意欲が低い。
若い人達を部下に持つ上司は、ゆとり(さとり)世代の部下を鼓舞するための言葉掛けを工夫する必要がある。「物やお金じゃない何か」で報われるかもしれないと思わせる必要がありそうだ。
50代の部長が、「愛社精神」、「競合とのシェア争いに勝つ」と部下を鼓舞しても響かない。40代の課長が、「目標達成に伴う、金銭的見返り(昇進・給与・ボーナス)は大きいぞ」と部下を鼓舞しても、あまり響かない。
では、「この目標が達成できたなら、俺たちの手法が最も顧客に支持されているということだよ」とか、「これが上手くいったら、僕たちが業界の先端だよ。やばくない?」という言葉で鼓舞されたならどうだろうか?
たぶん、それを成し遂げたときに、「俺は、私は、何者になれるのか?」というエッセンスが大事なポイントなのかもしれないのでは?と思ったりしている。
20代の「さとり世代」は失敗したく無い世代
20代の「さとり世代」はこのように定義されているそうだ。
一方で、情報通信技術の進歩と共に、当たり前のようにインターネットに触れてきた。このように成熟した時代に多くのネット情報に触れる中で、彼らは現実的な将来を見通して悟ったようになり、無駄な努力や衝突を避け、過度に期待したり夢を持ったりせず、浪費をしないで合理的に行動するようになった、と見られている。
引用:コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E3%81%95%E3%81%A8%E3%82%8A%E4%B8%96%E4%BB%A3-189547
で、冒頭の話題に戻るのだが、僕の友人の部下達とのエピソードを紹介したい。上記の引用でもあるように、仕事上の調べものでもすぐにネットを頼るそうだ。
わからない事をきちんと調べることは良いのだが、彼曰く「眼の前にいるんだから、サラッと聞けば良いのに。速いし確実。」と言う。
上司である彼は、説明しているそばから「この説明では伝わりづらいだろうな」と思いながら喋っている時があるそうだ。
しかし部下からは「先程から会話に出てくる○○って何スカ?意味がわかないです。」って質問が来ないからとりあえず放って置くそうだ。
後で「あの説明で分かった?」と聞いてみると、『さも、ついさっきネットで調べました』というような浅い内容を、「あー、既に知っていましたよ」という感じで応対されることが多いそうだ。
こうなると部下に踏み込む気が失せるそうだ。「言葉の意味は正しいが、この業界では、そういう使い方や理解をしないよ」と注意すれば、「調べたけどそんな事書いてなかった」とか、「先に教えてくださいよ。せっかく調べたのに」と言われるそうだ。若い人達の自尊心を傷つけることになるのだという。
僕たちの世代では考えられない対応だ。殴られてもおかしくないぐらい生意気だ。上司がそのような質問を投げてきた場合、仮に既に調べていたとしても、「ちょっと自信が無くて調べてみたんですが、〇〇というふうに理解してるんですが、合ってますかね?」ぐらいの切り返しはしたものだ。
また、他の若い部下に社用で家電量販店に行かせたときの話を聞いた。
営業マンに持たせる社用のスマホのカバーが総務のミスで届いていなかったときのことだ。
友人は部下の一人に「シンプルなデザインで、黒か紺色のようなビジネスっぽい色で、手帳タイプのスマホカバーを買ってきて。ネックストラップが通るような穴が付いているタイプね。5つ購入してきて。」と指示をし、20000円を渡したそうだ。
家電量販店の場所は、オフィスから徒歩10分の場所にも関わらず、1時間たっても帰って来ないので見に行ったそうだ。
スマホカバー売り場で、自分の携帯を一心不乱に操作している彼を見つけた。
しばらく様子を見ていても、スマホを操作を一向に止める気配がないので「何してるんだ?」と声を掛けたそうだ。
部下は、「あ、課長。調べてるんです。」と言い放った。
友人は、「何を?」と尋ねると。部下はこう答えた。
「予算内で候補となるスマホカバーはいくつかありました。どれが一番良いのか、レビューを見て吟味してるんです。まあでも、アマゾンのレビューも金で買えるって噂ですし、信用しすぎも駄目なんですけどね。もうチェックし終わりますんで・・。」
「ほら、やっぱこーゆーのって失敗したくないじゃないっすか?」
「どれだけ時間をかけてるんだ、そんなのどうでも良いんだよ!」とキレそうになるのを何とかこらえた。
「どうでもいい」という単語はゆとり(さとり)世代には禁句だ。彼は良かれと思ってやっているのだ。その行為を全否定するワードだ。管理職研修でも講師が言っていた。
その後、彼はレビューを見るのを止め、いざ選択するというタイミングでも決めきれず再度悩み始める。
挙句の果てには「課長ならどっちが良いと思いますか?」と質問をなげかけられ、「どっちでも良い」とは言えず、「こっちでいいんじゃないかな?」と選択させられてしまう。
「血管がキレそうになる」とはこのことだと痛感したそうだ。
ゆとり(さとり)世代は「将来を見通してさとる」、「無駄な努力や衝突を避ける」、「過度に期待しない」、「夢を持たない」「浪費をしない」、「合理的行動をとる」と表現されているが 、その根本は「失敗したくない」というキーワードがすべてを物語っているように感じた。
そして、そんな部下を持つ地方銀行の友人は、このような世代と格闘し続け軽い鬱になってしまった。
ではでは。