僕は大阪生まれの大阪育ちだ。しかし、社会人になってから関西で仕事をしたことはほとんどない。
大阪本社の会社に勤めながら、県外の支店に席を置いたりしていた。滞在期間の長短はあれど、佐賀県・埼玉・神奈川・東京・茨木・愛知・岐阜・三重に住んでいた。
物件開発をやっていると、仕込みから立ち上げまで最低2年はかかるので、地域に入り込んで調整に当たるのだ。
そんな背景があり、時折、自分の関西弁に自信がなくなる。現役の関西人を前にすると臆してしまう。(現役の関西人てどんなんやねん)
ビジネスマンとして仕事をする以上、基本的には敬語を使う。敬語には方言独特の言い回しやイントネーションを封じ込める効果を持つ。
しかし、関西弁は違うのだ。敬語であっても関西弁色が非常に色濃く出る。県外の人にもギリギリ通用する「大阪国」独自の敬語を開発している。
しかしながら、地元以外の地域で過ごす時間が長くなるとさすがに薄れていく。その結果、僕のような人間が出現してくるのだ。
転職をして1カ月がたったある日のこと。
事務員の女性(僕よりは年上で40台のお姉さんだ)が、僕に話しかけてきた。
「kamiさんは関西出身なんですか?」
と尋ねられた。僕は、そうだと返答をした。
さらに彼女は、「生まれ関西、育ちも関西ですか?」と尋ねてきた。
そうだと返答をし、ついでに「生まれも育ちも大阪」であることを付け加えた。
彼女は「え!大阪なんですか?」と意外そうなリアクションをした。
彼女は少し思案した後…
「kamiさんの関西て…偽物っぽいわぁ」
と関西弁で切り返をしてきたのだ。
なんと失礼な。僕にしてみれば、「わわ、女、貴様関西人だったか!」という展開である。聞けば、彼女は三重県出身だった。
三重県は、愛知・岐阜・三重の3県で、「東海三県」という括りで取り扱われることが多いが、言葉の文化でいうと三重県だけが関西弁を使うのだ。
彼女曰く、「イントネーションが関西弁のそれではない」とのこと。「何でですのん?」「〇〇ちゃいます?」、「え、ホンマですか」、「〇〇やと思います」といった関西弁のキーワードを頻繁に使うわりに、普通の単語のイントネーション間違っているので「キモイ」そうだ。
彼女は、「何でですのん?」、「〇〇ちゃいます?」、「え、ホンマですか」、「〇〇やと思います」といった関西弁で多用される表現は市民権を得ているので、「イントネーションが正しいかどうか」が重要だと主張している。
今や、テレビ番組において、お笑い番組以外のまじめな番組にも関西芸人が多く出演している。
以前と比較して「市民権を得た」という言い方は正しい。彼女の言う「イントネーションが肝である」という指摘にも納得がいった。
そんな会話をしているときに外線が鳴った。
僕は、受話器を取り「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇でございます。」と言葉を発した。
彼女は、必死に笑いをこらえていた。
「おでんわ」は関西弁のイントネーションになっているが、「ありがとう」は標準語になっているとのことだ。「うさんくさい詐欺会社に電話したような気分になる」と言われてしまった。
彼女は、「ウチが矯正したる」と宣言してきた。しばらく特訓をしてもらったが治らない。
彼女と話している時は、関西弁のイントネーションの波に乗れるのだが、関西弁以外の方と話しをすると乗れない。戻ってしまうのだ。
それよりも、イントネーションを意識し過ぎるが故、余計に変になってしまった。彼女からは、「キモイを通り越して、舐めてんの」と言われてしまった。
事務方のお局さんを怒らせてしまっては業務に響いてしまう。ちゃんとしたイントネーションをマスターしなければと、ググってみた。
え?
何をググったのかって?
「関西弁 イントネーション」
屈辱すぎる・・。
冷静に考えればおかしい。
俺は「生粋の大阪人」だ。
その俺が、なぜどっちつかずの三〇県人のババァに関西弁の特訓をしてもらわなければならないのか・・。
屈辱に耐えながら、PCを覗き込んだ。
これが、「関西弁 イントネーション」の検索結果第一位だ。
結論を言おう。
僕はこの記事のおかげで失ったものを取り戻せた。感謝している。
関西弁と標準語のイントネーションの違いを、アニメーションで分かりやすく解説されている。
しばらく関西弁から離れていたそこのあなた!
素早く、直感的なマウス操作で、今すぐ取り戻せるんです!!
こんなコピーが似合う記事です。
ほな、さいならぁ~~