「喜ばせられなければ店を開くな」
中国のことわざにあるそうだ。知人から教えてもらった。
彼とランチに出た時に、目的とする店が閉まっており、どこか違うお店に入ろうかしらとキョロキョロしていた。
「食べ放題!ご満足いただけなければ返金致します。」店舗の入り口に、こんな広告物を見かけた。比較的新しいお店だった。チェーン店ではない。
よほどの自信があるのだろうか?
「ご満足いただけなければ返金します」という誘い文句で、ある一定の顧客が引けると判断しているのか。
「満足できなかったから返金してくれ」ということを「卑しい」と捉える国民性をうまくついた戦略なのか?
僕は「ご満足いただけなければ返金致します。」という広告物から、そんなことを想起した。
その店の前まで行ってみた。
その広告物をまじまじと読んでみるとこんな注釈があった。
- ご返金の対象となるのは、ランチのAコース(60分)に限らせていただきます。
- ご返金をご希望の方は、入店後15分以内にお申し出ください。
- ご返金は半額を現金で返金致します。
- ご返金を受けたお客様はその時点でご退店頂きます。
- ご返金はおひとり様1回限りとさせていただきます。
- ブッフェ形式となりますので、ご希望のメニューを充分にお召し上がりになれない場合があります。
- Aコース限定のステーキとローストビーフは、注文制となっており、お皿は交換制となっています。
うーん。
どうです?
なかなかでしょ。なかなかの酷さです。
- 返金してもらえるという心理を突いて、一番高い松コースの発注率を高める。
- 15分以内に「満足できなかった」と答えるバカは少ない。
- 返金システムはランチタイムのみで一回限りとすれば、お試し感覚で入店してもらいやすい。
- 仮に返金システムを発動されても、たかだか15分で店側に大きな損害はない。食べ放題とは言えブッフェ形式。移動のロスタイムがある。
- ローストビーフとステーキなどの高単価商品は注文制にすれば、提供速度次第では、食わせる量をコントロールできる。
まあ、店側の狙いはこんなところだろう。
経営コンサルタントである知人は、この注釈を読み、「顧客を何だと思っているのか?恥を知れ」と言っていた。この店の店主には、「ピーター・F・ドラッカー、5つの質問」を勉強してもらいたい。とぶつくさ言っていた。
僕は、シンプルに「このオフィス街から消えて欲しい」と思った。どこでお店を開こうが、どんな業態で開業しようが、それは店主の自由だ。ただ、サービス業として姿勢が不快だ。
「あなたは、この街の誰を喜ばせたくて商売を始めたのか?」と問いたい。
想像してほしい、毎日このオフィス街でビルの中で閉じ込められて働くビジネスマンにとって、お昼に外に出る機会がどんな意味を持つのか。
この店の店主には「美味しいものを食べて、午後も頑張ってください」という想いが無い。この観点から、飲食業を志していたら、こんなシステムは思いつかない。
「喜ばせられなければ店を開くな」
深いな。この言葉は。