こんにちはkamiです。
「コンビニの24時間営業の是非を問う議論」が活発ですね。
セブンイレブンが直営店で実証実験に乗り出したり、ローソンが無人コンビニの開発に本腰を入れたり、海外では既に無人の小売店舗が成立している。
利便性や顧客第一主義を追求してきたことや、国民性もあるんだろうけど、ホントいろいろなことが便利になった。
「そんなことまでしてもらわなくていいですよ」って思うサービスにあふれている。差別化しないと生き残れないのだ。何とも息苦しい。
で、何の話だっけ
そうそう、コンビニの24時間営業の是非。
「是非」って言ってもこの手の話は、書き手の立場が変われば「正解」も「正義」も変わるので、「へー」、「ふーん」って話を垂れ流すに過ぎないのですが、お付き合いください。
僕は長年、不動産の開発・運用にかかわっており、様々な方々と土地の取り合いに興じることがあります。
このような素地がある僕の視点で意見を申し上げると、「24時間営業をする必要性が無いコンビニが増えると、適切な価格に落ち着く場所が増える」と思っています。
だから、どんどん議論が活発になれば良い。でも、セブンイレブンのことだから、今行っている実証実験なんて、ちょっと世論の批判をかわすための、パフォーマンス的な位置づけで、3年はうやむやな状態が続きそうな気がしますね。
●コンビニが一番高く土地を借りられる?
- 「土地の価格には相場があるんじゃないの?」
- 「24時時間営業と土地の価格に何の関係があるの?」
と思う人もいるでしょうか。
もちろん「全ての土地でそうなる」と断言はしませんが、まあまあ合っているんじゃないでしょうか。「コンビニ」という業態が土地の賃貸相場や賃貸の形態を大きく変えたと言えるでしょう。
ロードサイドには、多種多様な業種が出店しています。コンビニ、ラーメン屋、焼き肉屋、コインランドリー、カラオケ店、デイケア、葬儀会館、金融機関、フィツトネスクラブ、パチンコ店、宅配ピザ屋・・・。
業態によって必要とする土地の大きさはバラバラなので、競合しない場合もあります。事業用の土地で、最も多くの競争相手が集まるのが、350坪~500坪です。コンビニもこの350坪~500坪がドンピシャなのです。
但し、500坪ともなるとさすがに大きいので、コンビニが一括で借り上げて、敷地内にコインランドリーや、携帯電話ショップを誘致して、土地を「また貸し」するパターンが多いです。
余談ですが、350坪~500坪の土地に限って言うと、下記のテナントが高額な地代を払える業種・業態です。
物販:コンビニ・ドラッグストア
その他サービス:ガソリンスタンド・金融機関・葬儀会館
ドラッグストア、葬儀会館、外食産業は、商圏の考え方がコンビニのそれよりも広域です。ゆえに、出店するエリアが限られ、通行量の少ない住宅街に出店するようなことは稀です。
富裕層が多い特定のエリアへの進出する場合、ある金融機関は相場の2倍で土地を借りたケースがありましたが、もう昔の話です。今後はAIの導入や銀行同士の提携が活発化し、金融機関の支店は急激に減っていきます。
ガソリンスタンドも、車離れ、ガソリン車減少の波に耐え切れず、廃業が増えているのが現状です。
このように、土地の価値は、「需給と立地」で大きく変わってしまうもなんです。
●コンビニが高く土地を借りれる理由
それは、この2つの理由です。
- 「ドミナント出店」という戦略方式。エリアを面でとらえて制圧。
- 24時間365日営業の生活必需品の物販店というビジネスモデル。
24時間365日営業は説明不要ですよね。必然的に、日中の営業のみより、売上は大きくなる為、支払える賃料も多いというシンプルな理屈です。
一方、「ドミナント戦略」に関してですが、ご存じでない方のために補足しておきますね。
コンビニは、特定のエリアに等間隔・高密度に出店して、マーケットを「面で制圧する」ドミナント戦略を基本としています。少々立地が悪くても、道路付けが悪くても、住宅街であっても出店の可能性を模索します。
ドミナント戦略によって、マーケット内の既存店の売上が下がることがあります。FCオーナーにとっては死活問題ですが、コンビニ本部としては「マーケットを制圧できれば、他社のコンビニが入ってこれないので、コンビニ本部の収益は増える」という考え方です。
その結果、新興住宅街なんかで、3ブロックごとに同じブランドのコンビニがあるというようなエリアが出来上がるのです。
ですから、住宅街の交差点の角地なんかは、エリアの制圧・拡大のためには、是が非でも欲しいわけで、他社が追随できない金額を提示してかっさらっていくのです。
●土地の開発業者が助長する。
コンビニが土地を取得するには、「開発業者」の存在が不可欠です。彼らは、コンビニに土地を供給することが、「最も儲かる」と知っています。
「開発業者(仲介業者)が得られる手数料は法律で決まっている」と言うご指摘もあるかと思いますが、それは違います。
「非正規の手数料」が飛び交います。あるコンビニチェーンは「正規の手数料とは別に、相場調査料で100万円、コンサルティング料で100万円を払います。」と自ら言ってこられます。牛丼チェーンや、ハンバーガーショップの比ではありません。
一つの店舗を、一つの土地に収めていく作業にかかる手間は、コンビニでもハンバーガショップでもさほど変わりません。手間が同じであれば見返りの多いコンビニに、どんどん出店させたいと考えるのが開発業者の心情というものでしょう。
●土地の所有者も「コンビニマンセー」
土地を貸す側の地主は、もちろん「コンビニマンセー」です。
なぜなら、そこそこ立地が良くてまとまっていれば、「少々小さくても」、「少々大きくても」、「少々歪んでいても」、「田舎の住宅街」でも、コンビニが一番高く借りてくれるということを、地主も知っています。
土地の所有者の中には、コンビニに選んでもらえるように「物件を拡張して貸したい」と考えている人も多いです。その為、開発業者には「隣の土地を買収」する依頼が舞い込んできます。
こうして、「コンビニ借りてもらいたい地主」の気持ちに応じて、「土地をひとまとめ」にする動きがどんどん加速していくのです。
●コンビニ、開発業者、土地所有者、消費者 4方よし。
- 高い賃料が払えるビジネスで土地を獲るコンビニ
- 見返りが多いコンビニに土地情報を売る開発業者
- 高い賃料を貰える土地所有者
- 使い勝手の良い24時間営業のコンビニを利用する「私たち」
コンビニに係る利害関係者4社が喜ぶ状況。近江商人の哲学ではありませんが、これだけ多くの人が喜ぶなら「何も悪いことはないじゃないか?」と感じます。
でも、世の中はバランスです。
「4方よし」の状況を成立させるためには、他の利害関係者が相当割を食っているという状況なのです。もちろんそれはコンビニのFCオーナーです。
●コンビニ経営者の地獄を見た
日用品の販売にとどまらず、ATM、宅配便、公的証明書の発行窓口も担っている「コンビニ」。おいそれと営業をやめるわけにはいかない。そもそも、臨時閉店等は原則許されない。もはやコンビニは「社会公器」である。
本部のドミナント出店により、次々と既存店の近くに新しいコンビニが生まれてくる。他社であればともかく、同じブランドのコンビニオーナー同士が競合させられ、売上が激減していくケースも多い。本部に窮状を訴えたところで、「利益を確保したければコストを削れ」と指導されるだけ。
そんな事業に、「夫婦や親族等の近親者のパートナー」を伴って参画し、「どっちかが倒れても、支え合って24時間店を運営しろ」と言わんばかりの加盟契約。その結果、オーナーの夫妻・子息・兄弟等一家総出で労働をしている店舗も多い。このような、家族や親戚頼みで、コンビニを24時間維持していくことも難しい店舗も多く、過剰労働を強いられているFCオーナーが悲鳴を上げているわけです。
コンビニが破綻するだけならまだしも、家族が破綻するケースもあります。 そんな姿を多く見てきました。
● 最後に
ブランドやコンセプトは「24時間」であったとしても。24時間営業をする必要性のない地域では、24時間営業をする必要はないです。
労働者に、様々なライフスタイルや、働き方を求められようとする風潮があるのと同じように、「24時間営業が当たり前だったコンビニエンスストア」が「24時間営業の必要性のない地域では、深夜営業をしない」というスタンスで良いと思っています。
「24時間営業」にこだわりすぎて、転換のタイミングを見誤ると、大きな損失を招くんだろうなと思っています。
コンビニが日本に上陸して、まもなく45年です。コンビニのステレオタイプが、破壊されるには十分な時が経過しました。今回の24時間の是非を問う社会的な機運は、一部のFCオーナーによってもたらされたものではありますが、本部は真摯に受け止めてほしいものです。
ネット通販の存在がリアル小売店舗の存在を脅かして久しいですが、AI、ドローン宅配、自動運転なんて時代がそこまで来ています。コンビニ自体が、ビジネスモデルの転換点に来ていると心得えて頂きたいものです。
とまあ、きれいごとをつらつらと書いてきましたが・・。
当然僕も、住宅街でコンビニに貸したいという地主様から依頼を受けると頑張って誘致活動をするわけです。
その結果、不用意に周辺相場を釣り上げてしまうかもしれません。また不幸なFC加盟オーナーを生み出すのかもしれません。
そんな「きれいごと」に悶々と苦悩するほどピュアな心は持ち合わせていないので、利害関係者の一員として、役割を果たしていこうと割り切ってビジネスをしていきます。
それでは。