「芋焼酎って臭くておいしくないーー」
「熱燗の何が美味しいの?香りで『ウェェ』ってなる」
昨晩、僕は男性2名でバーのカウンターに並んで座っていた。いわゆる、「オーセンティックバー」と言われる、ダーツ等のゲーム機とかなくて、焼酎や日本酒が置いてない、正統派のバーに来ている。
バーテンダーは1人、バイトのスタッフが1人。バーテンダーはちゃんと「バーコート」と蝶ネクタイを身にまとっている。
カウンター椅子4つ挟んだ先に、男女二人連れが座っている。20台の中頃だろうか、二人の関係はカップルではなさそうだ。二人とも、この店の常連ではなさそうだ。尚、僕たちも常連ではなく初見の店だ。
先ほどから、上記のようなお酒にまつわる持論を展開している。男性もあまりバーには来たことがなさそうだ。お酒の飲み方が経験値不足を物語っている。
もはや、聞くに堪えない内容だ。
●「まずい」、「おいしくない」
まず、当たり前のことだが、飲食物に対して「まずい」、「おいしくない」という表現はやめた方が良い。
大人であれば、一度口に入れてしまったら、それは頑張って食してください。何か、コメントが必要なら「ちょっと私は苦手です」、「好まないかな」ぐらいの表現に留めて欲しい。
どんなものであれ、人が心を込めて作ってるものを、「自分に合わない」からといって一刀両断するのはどうかと思う。
食べれないものがあることは決して罪ではない。僕にも5つくらいあるし、克服する気もない。
「苦手なものはありますか?」と聞いてくれるような高単価な飲食店では、伝えるようにしているが、すべてのお店がそういった配慮をしてくれるわけではない。そんな場合、食べ物の中に混ざっていたとしても黙って食べる。
あなたの味覚に合わずに食べれない食品は、当然誰かの好物であることは認識したほうが良い。
●芋焼酎が臭い
女:「芋焼酎って臭くておいしくないーー」
男:「そりゃあ芋だからだね」
いいえ、違います。
原材料は「さつま芋」です。さつま芋はご存知の通り、臭いどころか甘い香りがしますよね。この甘い原材料を加工していくわけですが、さつま芋の品質、保管状況、加工時の処理で香りも味も大きく変わります。
また、それぞれの酒蔵の蒸留装置やろ過技術の差で大きく変わります。さらに、瓶詰め時の温度管理でも変わっていきます。そういった過程で出来上がった「お酒」のアルコール臭の匂いが、強いか強くないかという問題なんです。
●燗酒の何が美味しいの?
女:「熱燗の何が美味しいの?甘ったるくて臭くてウェってなるーー」
男:「それさー安い酒だったんだよ。高い酒なら大丈夫だよ」
「いいえ、違います。」
日本酒を加熱すると、「甘みとうまみが強まり、アルコールが際立つ」のです。大手酒造メーカーによって大量生産された結果として価格が安価になっている日本酒も、地方の酒蔵が作っているプレミア日本酒も、加熱すれば同じです。彼女の言葉を借りれば「甘ったるくなって、香りが強く鼻孔をくすぐる」ことになります。
●やっぱり、私はカクテルが好き
女:「やっぱりカクテルだよね、可愛いし・おしゃれ。」
男:「うん。わかる。俺は、バーと言えばウィスキーだな。ウィスキーはさ、麦の香りを楽しむんだよ」
揚げ足を取る気はありませんが・・
あなたが飲んでる「アーリータイムズ」は分類上ウィスキーには間違いないが、「バーボンウィスキー」と呼ばれるものです。原材料のほとんどが「トウモロコシ」なんだよな。
原材料が何であれ、特にウィスキーは香りを楽しむものと言う見解は正しい。でも、あなた方が先ほどから漂わせている香水の匂いで、ご自分のお酒はおろか、僕達の飲むウィスキーの香りまでも台無しなんですよね。
もう、どうしたら良いのか・・。
●この場合、バーテンダーが悪い。
若いから、お酒の知識がないことも、振る舞い方を知らないことはダメじゃない。バーのような雰囲気のお店でお酒を楽しむことも大切だ。色々なお酒を飲んでいくうちに舌が肥えてくるし、他のお客さんの振る舞いを真似て、経験値を蓄積していくのです。
この場合、バーテンダーさんがダメです。
ちゃんとしているバーでは、男性に恥をかかせないように、さり気ないタイミングで、いやらしくない言葉で、正しい知識や振る舞いを教えてくれるもんだ。
もちろん、この場に漂っている香水の匂いが消えるわけではないが、彼らに正しいことを伝えようとしている「バーテンダーさんの振る舞い」に僕らは救われるのです。
バーテンダーさんの、「まぁまぁ、許してやってつかぁさい。お兄さん方も若い頃はこんなだったでしょ(苦笑)」って姿勢が見えるから。
でも、このバーテンダーさんにはそれが無かった。
●夜の遊び方を学ぶ
バーテンダーさんが、楽しいお酒との付き合い方や、バーでの遊び方を教えてくれなかったら、若い人たちはどうやって正しい遊び方を学ぶんだよ。
僕たちは、チェックをお願いし、席を立った。
バーテンダーさんからは一言もなかった。
とても、残念な気持ちで帰宅の途につくことになった。